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米で売上好調 日本の漫画

米国で売上好調な日本のマンガ。世界で読まれるために必要なこと

日本マンガの翻訳出版が好調

ふと、気になるニュースを見つけた。「米国の2018年日本マンガ売上げ7%増 6年連続増加」というものだ。このニュースによると、米国の日本マンガの翻訳出版の2018年の売上が対前年比7.24%増。2013年以来6年連続の増加という好調が続いているとのこと。

日本マンガを含むグラフィックノベル全体の2018年の売上は6億3500万ドルで、この内、日本マンガは約1億4600万ドル(約160億円)と約23%を占めているそうだ。へぇ~、けっこう売れている。毎年、あれだけNYコミコンが盛り上がりを見せ、全米各所でも派生的なイベントも増えているので、その影響もあるのかもしれない。

なお、この調査は米国で日本カルチャーの振興と普及を目指すSPJA(The Society for the Promotion of Japanese Animation)がとりまとめたもの。担当したプロデューサーのダラス・ミッドー(Dallas Middaugh)は、日本マンガを中心に動画配信するCrunchyrollや出版会社のPenguin Random House、日本の出版社が共同出資して創業したViz Mediaでの経験を持つ人物とのことなので、米国の出版および日本マンガの翻訳出版などに詳しい人物がとりまとめたものなのである。

そのため、日本マンガの翻訳出版を主に行なっているメジャーな出版社の売れ筋トップ5などもあり、なかなか参考になる。

ご参考:
● 米国の2018年日本マンガ売上げ7%増 6年連続増加
● SPJA, Nonlinear World Present White Paper on N. American Manga Industry

日本マンガの翻訳出版数や売上、シェアなどについては、過去にクライアントからも、そういったデータが無いかなど要望は多々あったものの、ここまで詳しい調査レポートは知る限りでは出ていなかった。
調査レポートはたいがい誰かが興味を持ち利益に結びつくという理由で調査しない限り作られることはない。日本マンガの売上に興味を持つアメリカの出版関係者が少なかった証拠でもあるが、ようやくここまで詳しい調査が出たということは、それだけ興味を持つ人々が増えているとも考えられる。
上記1つ目の記事最後に調査レポートを閲覧できるURLが貼ってあるのでご興味ある方はどうぞ。

異世界転生ものと宗教感

ところで、日本では最近、異世界転生もののマンガが様々出ている。
異世界転生マンガとは、(たいがいが)不慮の事故で亡くなった後、なぜかそれまで生きていた世界とは違う、異世界に前世の記憶を持ったまま生まれかわって(しかし、たいがい性別や種族が違う)、それまで生きていた世界での知恵や知識を使い、異世界で生じる問題を解決したり、なんやかんやと物語が進んでいくマンガのこと。

例えば、テレビアニメ化もされた、転スラこと「転生したらスライムだった件」は、やり手のビジネスマンが通り魔に刺され死亡。目を覚ますと異世界でスライムに生まれかわっていて、なんやかんやと敵に対抗する術を身につけ、一国を治めるまでになるというお話。

しかも、通り魔に刺されたのは可愛い後輩(結婚が決まって将来がある)を守るためという正義感溢れるビジネスマンだった。異世界でもその性格は変わらず、「正しいことをしよう」とか、「仁義を通す」といった考え方が異世界人に支持され、敵をも友達にしてしまうというもので、読んでいて気持ちの良いマンガとなっている。
ご参考: ● 転生したらスライムだった件Wiki
当然、ファンも多く初の展覧会となる「転生したらスライムだった展」が開催されたほどの人気ぶりなのだ。
ご参考: ● 『転生スラ』初の展覧会「転生したらスライムだった展」特設サイトがオープン、グッズや展示内容公開
他にも異世界転生ものは様々なものがあり、数がありすぎるので異世界転生トップ30をランキングしたものも。ちなみに1位はやっぱり転スラだ。
ご参考: ● 異世界転生トップ30
当然、転スラも翻訳され、アニメ版はCrunchyrollアメリカで視聴可能となっている。
ご参考: ● That Time I Got Reincarnated as a Slime

キリスト教にない輪廻転生の概念

ところで、この異世界に転生すること、つまり、生あるものが死後に生まれ変わって再び肉体を得ることを輪廻転生といって日本では仏教思想の1つとして知られていることは聞いたことあるという方も多いと思うが、どの宗教でも生まれ変わりを信じるわけではない。
日本では、例え仏教徒じゃなくても、また、本当に転生するかどうかを信じるか信じないかは別としても、概念としてそういう考え方があるということを認識している人は多いと思う。でも、仮に信心深いキリスト教徒の場合はこの考え方は理解できないのではないだろうか?

キリスト教が多い欧米では、例えば、堕天使のルシファーを主人公にしたドラマやマンガはあっても、異世界転生もののコンテンツはないに等しい。なぜなら、輪廻転生という概念がキリスト教にないから(もし、間違っているよ、という場合はご指摘ください)。

一言でキリスト教といっても宗派がいろいろあるので、一概には言えないが、世界に売れるコンテンツについて考えると、世界の宗教や文化を無視しては作り上げられないかもしれない。

日本でこれだけ異世界転生もののマンガが人気な理由は、漫画のストーリーの面白さや絵が好きなどの理由の他に、多くの日本人が無意識のうちに輪廻転生という概念を理解しているからだと思う。信じるか信じないかは別として、「そういう考え方もあるよね」と思う人が多いのだ。

でも、生まれ変わるという概念がない宗教の場合、現象としては捉えられるが、なんだかイマイチ良く分からない奇想天外な発想と感じるかもしれない。

上述で引用した調査レポートに出版社ごとの売れ筋ランキングも出ているが、日本でこれだけ人気がある異世界転生ものはぱっと見た感じでは入っていない。

もちろん、故スティーブ・ジョブズが、仏教を学んでいたとか、仏教が生まれたインド発祥のヨガがアメリカで広まっているという事例もあるので、異世界転生ものがまったく受け入れられないということはないかもしれない。 でも、もし海外で広く人気を得ようとした場合、宗教の考え方の違いを理解した上で、各種プロモーションや宣伝方法を考えるとより理解されやすいかもしれない。






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